熱中症と血行不良の関係性とは?|原因と対策
熱中症
整形外科・スポーツ専門医

監修医師プロフィール

天理大学 准教授 スポーツ医・救急医・整形外科
眞鍋憲正 医師
信州大学医学部卒業。同学大学院、疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座博士課程修了。市内病院での臨床や米テキサス州の病院・大学での客員研究員を経て現在は天理大学体育学部 准教授。専門研究分野はスポーツ医学・運動生理学。
熱中症は体温の調整ができず、体温が異常に上昇してしまう症状です。重症化すると意識障害や臓器不全などを引き起こすこともあります。その熱中症は普段の血行が原因となる場合もあります。その原因と対策をお伝えします。
熱中症の原因

熱中症の原因は、主に「体内に熱が過剰にこもってしまうこと」や「体温調節がうまくできないこと」によって起こります。
気温や日差しなどの環境要因
特に夏は35度を超える酷暑の日が続き、さらに湿度が高い日も続くと体温調節が上手く対応できず体内に熱がこもって熱中症に繋がります。屋外で日差しがあるアスファルトの場合は、照り返しで体温がさらに上がってしまい熱中症のリスクも上昇します。
体調不良などの身体要因
疲労状態や睡眠不足・二日酔いなどが続くと体温調節能力がうまく働かず、熱中症リスクが上昇します。また成人に比べ、高齢者・乳幼児は体温調節が上手く行かずに熱がこもりやすい傾向にあるため注意が必要です。
屋外の作業などの行動要因
屋外での建設作業や部活動の運動など大量の汗をかくと脱水症状になり、体温調節ができなくなります。汗をかかない場合でも、スーツや作業着など通気性の悪い服や熱を吸収しやすい黒い服を着用すると、体温が上昇し熱中症に繋がります。
熱中症と血行の関係性とリスク

体温調節の一つとして、皮膚表面の血管を広げて血液を流すことで、身体内部の熱を皮膚血流に移動させます。このことにより、外部の空気と接触する面積が大きくなり、身体にたまった熱を逃がしてやることができます。発汗は、汗が乾く気化熱によって体温を下げます。この体温調節は、血液が十分に流れる状態であること、つまり熱中症になりにくい正常な体温調節は血行が良い状態が前提となります。
高齢者の熱中症リスク
高齢になるほど血管の壁が硬くなるとともに血管の内部が狭くなり、血流が滞りやすくなります。そのため体温調節に必要な皮膚表面の血流が十分に流れず体温調節の能力が低下してしまいます。
冷え性の熱中症リスク
冷え性は暑さに強く熱中症になりづらいと勘違いされがちです。しかし、ほとんど冷え性は手足の末端まで血流が十分に届かず、その箇所が冷えてしまう状態(血行不良)にあり、実際は身体内部の体温が上がっているにも関わらず冷えていると感じてしまうため熱中症にかかるリスクがあります。
心疾患・糖尿病など持病による熱中症リスク
心疾患や糖尿病など基礎疾患も発汗能力や皮膚血流を調整する能力に影響があり、体温調節が上手く行かずに熱がこもってしまい熱中症にかかるリスクがあります。
熱中症の予兆と対策

熱中症の対策としては要因を避け、熱中症の予兆を見逃さず早めの対策で重症化しないようにしましょう。
熱中症の予兆
もし自身が下記のような症状になった場合は慌てずに日陰への移動や水分補給に努めましょう。特に高齢者や乳幼児には注意が必要です。
●めまい・立ちくらみ
●足をつる・筋肉の痙攣
●顔のほてり・皮膚の赤み
●脈が速くなる・呼吸が浅く
●嘔吐が止まらない
●汗が全く出ずに皮膚が熱く渇いている
特に夏の屋外にて上記のような症状が続く場合は速やかに医療機関を受診しましょう。
熱中症にかかった際の受診科
熱中症の予兆はあるが、意識があり受け答えができている軽度の症状の場合はかかりつけ医や内科を受診しましょう。子供の場合は小児科でも受診できます。
嘔吐が止まらない、意識がないなど重症が疑われる場合は救急車を呼び、緊急に受診をした方がよいでしょう。不安な場合は救急安心センター事業(#7119)へ電話をかけ相談してください。24時間365日医師や看護師による相談が受けれます。
熱中症の対策
屋外ではこまめな水分・塩分補給のために水筒や塩分タブレットを携帯しましょう。また、お風呂の後にストレッチをするなど日頃から体の血行を良くする行動も大切です。アルコール摂取は利尿作用により脱水症状を促進するため、夏の飲酒は通常より多くの水分補給を心がけてください。
ボディメンテナンスウェアを利用する
ボディメンテナンスウェアは血行促進や疲労回復などを助ける衣類のことです。
機能性ウェアと違って、一般医療機器に指定されています。そのため、一定の基準を満たし、商品ごとに届出も行われています。
2022年に厚生労働省は一般医療機器に「家庭用遠赤外線血行促進用衣」という新カテゴリーを設けました。ボディメンテナンスウェアの販売には、日本医療機器工業会が定めた自主基準を満たすことに加えて、指定の機関への届出も必要です。
この点が一般的な機能性ウェアと大きく異なる部分なので、ボディメンテナンスウェアの購入を検討する際は、一般医療機器として届出がなされていることを確認しましょう。
ボディメンテナンスウェアには遠赤外線を放射する素材が使用されていて、着るだけで血行を促進、疲労回復、筋肉のコリの緩和といったことを助ける効果が期待できます。着るだけで日々の健康をサポートしてくれるという点が大きな特徴ですが、使用されている素材などは商品ごとに違いがあります。着用するシチュエーションや目的に応じて選びましょう。
熱中症にはこまめな水分・塩分補給と日頃の血行良化がポイント

熱中症は重症化すると後遺症が残るケースもあります。日頃から血行を良くすることを心がけ、特に夏の屋外で活動する際は水分・塩分をこまめに補給しましょう。高齢者や乳幼児は熱中症リスクが高い傾向にありますので注意しましょう。
冷え性の方が熱中症にかかりにくいという話は間違いで、冷え性でも年齢関係なく熱中症リスクはあります。近年は最高気温が41度に達するなど、昔に比べ熱中症にかかる方が老若男女問わず増えてきました。熱中症の予兆を見逃さず、日頃からの対策を心がけましょう。
監修医師からのコメント
血行不良は、記事内にあるように、身体内の熱の放散機能に直接影響を与える重要な要因です。そのため、特に高齢者や循環器疾患を持つ方では、血管の反応性が低下しており、熱中症への注意が健康な方よりも必要となります。低下してしまった血管機能は運動をすることで改善されることがよく知られています。近年の暑い夏に熱中症にならないためにも、運動習慣をみにつけ、健康管理を十分にしていきましょう。
監修医師プロフィール

天理大学 准教授 スポーツ医・救急医・整形外科
眞鍋憲正 医師
信州大学医学部卒業。同学大学院、疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座博士課程修了。市内病院での臨床や米テキサス州の病院・大学での客員研究員を経て現在は天理大学体育学部 准教授。専門研究分野はスポーツ医学・運動生理学。